知っておきたい!再建築不可物件の基本

一度解体してしまうと立て直しができない理由・・・地方だけでなく都心部でも空き家問題が顕在化するにつれ、ある物件カテゴリーへの注目が高まっています。 それが「再建築不可物件」です。
再建築不可物件とは、一度解体してしまうと、新たに建て直すことができない物件のことを指します。
不動産業では、該当する物件に加え、それらが建っている土地全体を指すとして使われることもあります。

再建築不可の物件が存在する原因とは?

建築基準法でルールを定められているのに、どうして再建築不可物件が存在しているのでしょうか。

再建築不可物件が存在するのは、何度も実施された建築基準法の改正が原因です。

現行の建築基準法を満たせない建物などが「再建築不可物件」として扱われてしまうのです。

まずは再建築不可物件が発生してしまう原因を解説します。

法改正によって建築基準法を満たせなくなった

「建築基準法」は1950年5月24日に定められた法律で、1919年4月5日に定められた「市街地建築物法」もあります。

この建築基準法は国民の生命や健康、財産の保護を目的としており、建築物の敷地や設備、構造や用途について最低限の基準を定めたものです。

しかし、時代と共に造られる建築物も変わり、それに伴い建築基準法も改正されていきました。

その結果、現行の建築基準法の条件に適応できなくなった古い建築物などが、現在では「再建築不可物件」として扱われるようになってしまったのです。

接道義務を満たさないと再建築が認められない

基本的に宅地などの土地は、救急車両や避難経路として安全に利用できる道路が規定通りに接していなければなりません。

なぜなら、狭い通路しか接していない物件だと、災害時などに消防車や救急車が通行できず、被害拡大につながる危険性があるためです。

とくに火災などは鎮火が遅れると周辺の住居などに燃え広がるおそれがあるため、路地しかない物件の危険性は高まります。

こうした危険な建物を減らすために「接道義務」を設けて、条件を満たさない建物を「再建築不可物件」として、建物の再建築を認めないようにしているのです。

再建築不可物件となる具体的な条件とは?

「再建築不可物件」とは、文字通り建物を再建築できない物件のことです。

現在の建物を解体すると再建築ができないのはもちろん、火災などの災害で大規模修繕・建替えが必要でも、再建築の許可が下りることはありません。

再建築不可物件と扱われてしまう条件は、以下のとおりです。

道路に接する敷地の間口が2m未満

再建築不可物件になってしまうケースには、主に下記のようなものがあります。

これらは全て建築基準法の第43条にある「接道義務」に関係しています。

土地が道路に面していない

自身の土地に建築物を建てるのであれば、必ず敷地と道路が接していなければならないと建築基準法で定められています。

また、接する敷地も道路と2m以上は接していないと認められないという細かな決まりもあります。

しかし、以下の赤い建物と周りの敷地をご覧ください。

他人が所有する敷地に囲われている「袋地」であるため、赤い建物が建っている敷地は道路に接することができていません。

建築基準法における接道義務を果たしていないので、赤い建物は再建築不可物件として扱われてしまいます。

接する道路が建築基準法の規定外

こちらの図は自身が所有する土地と道路が2m以上接しているので、接道義務を満たしているように思えます。

しかし、接する道路が建築基準法上で規定された道路ではないため、こちらの建築物は再建築不可物件と扱われてしまいます。

建築基準法における道路には、道路の道幅が基本的に4m以上でなくてはならないというルールがあります。

上図のように、前面道路の幅員が3m程度しかない場合、救急車や消防車を含む緊急車両の通行が困難と考えられています。

そのため、建築基準法の接道義務を果たせていないと見なされて、敷地が道路に接していても再建築不可物件として扱われてしまいます。

道路に接する路地部分が短い

再建築不可物件になる代表例を説明してきましたが、特殊なケースもあります。

今回はその1つを同じく図を交えてご紹介します。

再建築不可物件 路地状敷地

こちらは細い路地を進んだ先に建築物がある土地、いわゆる「旗竿地」と呼ばれるものです。

先程の2つのパターンとは異なり、建築基準法上の道路(幅員4m以上)に2m接しているので一見すると問題はないようにも思えますが、実はこの路地部分の長さにも制限が設けられています。

路地部分の長さの制限は地域や各地方公共団体によって多少異なります。

東京都の場合、路地部分の長さの規定は以下のとおりです。

このように、再建築不可物件になる要因とは建物自体ではなく、自身が所有する土地や接する道路などの関係によって決まります。

再建築不可物件を建築可能にする方法

再建築不可物件であっても、将来的に建物の再建築が認められないわけではありません。

再建築不可物件を通常物件のように建築可能にする方法が存在します。
ここからは、再建築不可物件を通常の物件のように増築や改築などを可能にする方法をご紹介していきます。

セットバックを利用して建築基準法を満たす

自身が所有する土地が建築基準法を満たす道路に接していないために再建築不可物件となっているのであれば、セットバックを利用した方法がおすすめです。

「セットバック」とは後退という意味で、文字通り自身が所有している物件を後退させることで接している道路の幅を広くして、建築基準法を満たす道路に変更する方法です。

セットバックで後退させた部分は公道になる

自身が所有している土地の前面道路が幅員4mになったということは、建築基準法を果たしたということになります。結果として、今まで再建築不可物件として扱われていたものも通常の物件として扱うことが可能になりました。

ただし、セットバックを利用して後退させた部分は私道ではなく公道として扱われることになりますので、たとえ自身が所有していた敷地であっても建物はもちろんのこと、塀や柵なども設置することができないという制限があるので慎重に考えて行動するようにしましょう。

隣接している土地を購入して建築基準法を満たす

自身の所有する土地が建築基準法に満たないために再建築不可物件となっているのであれば、隣接している土地を購入する方法をおすすめします。

隣接している土地を購入して建築基準法を満たす

上図を例に解説します。

上図のように、自身が所有している土地が建築基準法を満たした幅員4m以上の道路に面していても、その道路に接している部分が1.5mしかなく接道義務を果たしていない住宅があるとします。

このままだと、もちろん再建築不可物件として扱われてしまいますが、図のように自身が所有する土地に隣接している部分を一部(上図では一辺0.5m分)購入することで、敷地の規模が大きくなるだけでなく、道路に面する間口も広がります。

自身が所有している敷地が道路と2m以上接していれば、建築基準法を満たしていることになります。

その結果、今まで再建築不可物件として扱われていたものも通常の物件として扱うことができるようになるのです。

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